かぞく

 

 

11月1日、娘の8歳の誕生日。

自宅でささやかな誕生会を開いた。

 

サツキ
おめでとー!
(クラッカーパァーン)

 

おめでと。
ヨッメ

 

娘が産まれてからつくづく思う。

時間の流れは本当に早い。

あの小さかった娘が、もう8歳ー。

 

 

 

その日の夜。

リビングでひとり、なんとなくスマホの古い写真を見返した。

 

産まれたときの写真。

初めてハイハイしたときの写真。

ウソみたいに小さな娘がそこにいる。

 

サツキ
かわええwww
いや、今でもかわいいけどさwww

 

8歳の女の子ってのは、僕が想像してたよりずっと大人だ。

学校に着ていく服を毎朝悩んでるし、友だち同士でLINEのグループも作ってる。

最近は、ひとりで習い事にも通うようにもなった。

 

お風呂にはまだ一緒に入ってくれる。

けど、それもあと少しで避けられるようになるだろう。

 

…おっ。
起きてたのか。
ヨッメ

 

サツキ
あ、ああ…。
ありがとね、寝かしつけ。

 

礼には及ばん。秒で寝た。
ヨッメ

 

サツキ
そっか、よかった。

 

さて、飲むか。
「チェンソーマン」の3話観ながら
ヨッメ

 

ヨッメと晩酌しながら、娘が産まれたときのことを思い出していた。

話は今から8年前、2014年にさかのぼる。

 

2014年 冬

 

妊娠した。
ヨッメ

 

サツキ
ファッ!?

 

ある寒い日の朝、ヨッメが何の前置きもなく言った。

思わずコーヒーを吹き出しそうになったのを覚えている。

 

サツキ
マ…マジで!?

 

マジだ。見ろ、これ。
ヨッメ

 

ヨッメが妊娠検査薬をテーブルに置く。

実物を見るのは初めてだ。

何が陽性で何が陰性かだなんて当然わからない。

なのに、縦に線が2本入っているのを見て、なぜか反射的に「おおっ!」と声が出た。

 

というわけだ。
仕事行ってくる。
ヨッメ

 

サツキ
は、はい…。

 

ヨッメはいつもと変わらない調子で仕事に行った。

相変わらず玄関に鍵はかけていかない。

 

サツキ
……。

 

サツキ
(パパになるのか…俺が…)

 

サツキ
…パパ!? 俺が!?

 

正直言って、喜びより戸惑いの方が大きかった。

 

自分なんかに父親が務まるのだろうか…?

そんなことを考えながら、すっかり冷めたコーヒーをすすった。

 

 

数日後

 

後日訪れた病院で、ヨッメの妊娠は正確なものだとわかった。

 

順調にいけば10月下旬。
ハロウィンベイビーだな。
ヨッメ

 

サツキ
(ドキドキ…ワクワク…)

 

妊娠がわかった日から、ヨッメはアルコールをピタリとやめた。

そして仕事用とは別に手帳を買って、日々の体温や体調の変化を記録するようになった。

 

念のため断っておくと、手帳を盗み見したわけじゃない。

ヨッメが手帳に何かを書いているとき、気になって質問してみたのだ。

 

サツキ
何書いてるの?

 

…体温とか、その日の調子とか。
知ってるだろ、私が手帳好きなの。
ヨッメ

 

サツキ
にしても、すげー細かく書いてんね?

 

まじまじ見るな。
体重も書いてるんだぞ。
ヨッメ

 

時同じく、僕も僕でタバコをやめた。

特に意味はないけど、最後の一本は吸わずに捨てた。

 

 

2014年 春

 

ヨッメの検診には毎回付き添った。

 

ついてこなくていい。
ひとりの方が気楽だ。
ヨッメ

 

ヨッメは煙たがっていたけど、エコー越しに我が子を見るのはこの上ない幸せだった。

やがて性別も女の子だとわかった。

 

そんなある日。

仕事が終わって家に帰ると、ヨッメが真剣な顔で本を読んでいた。

姓名判断の本だ。

非科学的な物事は「オカルト」と一蹴するタイプなので、その姿に僕はひどく驚いた。

 

サツキ
た…ただいま。

 

おう。
ヨッメ

 

ヨッメの手元にはノートが広げられていた。

候補名らしき名前でびっしり埋まっている。

 

 

好きか? 自分の名前。
ヨッメ

 

サツキ
…えっ?

 

私は好きだ。自分の名前が。
それは他でもない、両親のおかげだ。
ヨッメ

 

サツキ
……。

 

純粋で真心のある人に。
両親はそんな願いを込めて私の名前を決めてくれた。
それを知ったとき、意味もなく泣きそうになった。
ヨッメ

 

サツキ
……。

 

名前は親と子を一生繋ぐ。
いずれこの子が私たちのもとを離れていっても、好きな人ができて結婚しても、名前だけはずっと離れない。
ヨッメ

 

その後、僕たちは何日も話し合って子供の名前を決めた。

最終的に決めたのは、流行りでもない、特にひねりもない、ごく一般的な名前だ。

けど、そのありきたりな名前には、僕とヨッメの想いがぎっしり詰まっている。

 

この子がハタチになったら由来を教えてしんぜよう。
一緒にお酒を飲みながら。
ヨッメ

 

ヨッメはそう笑っていた。

 

 

2014年 夏〜秋

 

安産型みたいだな、私。
ヨッメ

 

本人も言うように、穏やかに日々が流れていった。

痩せてるから何かと心配も多かったけど、幸い僕の杞憂だったようだ。

 

今年も行くぞ、夏フェス。
チケットは取ってある。
ヨッメ

 

サツキ
ファッ!?

 

結局、ヨッメは産休直前までバリバリ働いていたし、オフの日はフツーに遊びに出かけていた。

 

 

 

 

日本中がハロウィンムード一色に包まれた、10月31日。

 

破水した。
ヨッメ

 

仕事中、とつぜんヨッメからの電話。

 

サツキ
あqwせdrftgyふじこlp!!!!

 

自分でもよくわからない言葉を叫んで会社を飛び出した。

大急ぎで車に乗り込む。

ハンドルを握りながら、子どもが産まれたあとのことしか考えていなかった自分を呪った。

 

バカ!俺のバカっ!!

子どもに着させたい服とか、買ってやりたいおもちゃとか…

そんなの優勢順位めっちゃ低いじゃん!!

 

大事なのはヨッメとお腹の中の子どもの「今」じゃん!!

こういう時の対処法勉強しとけよ!!

なにテンパってんだよ!!

バカ!!マジで俺のバカっ!!

 

特殊部隊が突入するみたいに家のドアを開けた。

ヨッメがきょとんとした顔でこちらを見る。

 

ど…どうした?
青ざめてんぞ。
ヨッメ

 

サツキ
い、いや…。
破水って聞いて慌てて…。
だ…大丈夫なの?

 

私は大丈夫だ。
けど病院に電話したら、今から入院道具を持ってきてくれって。
ひとまず、病院まで送ってくれ。
ヨッメ

 

サツキ
あ、ああ…了解。
(ホッ…)

 

病院までの車内、ヨッメはやけに口数が多かった。

これ以上、僕に余計な心配をかけさせないためだと思う。

なんだか胸が締めつけられ、この日はほとんど眠れなかった。

 

 

11月1日

 

翌日、仕事を休み朝一で病院へ。

 

サツキ
よっ。

 

…おお
ヨッメ

 

ヨッメはベッドに横になっていた。

僕を見て、ツラそうに体を起こす。

今朝から陣痛の感覚が狭まっているらしい。

 

ふぅ…。
ヨッメ

 

サツキ
よ…横になってていいよ…。

 

だ…大丈夫だ…。
ヨッメ

 

サツキ
なんか…いよいよって感じがするね…。

 

う…うん…。
ヨッメ

 

”いよいよ”がきたのは午後4時だった。

 

事前の話し合いで、立ち会いはしない約束になっていた。

「ひとりがいい」というヨッメの意見を尊重したカタチだ。

 

しかし、分娩室へ移動する際に思わぬハプニングが起きた。

「ほら!お父さん!奥さんをサポートしてあげて!」

ベテラン風の助産師さんが、僕の手を無理やり引っ張ってきたのだ。

 

サツキ
えっ!? いや、あの…
えっ、ええええっ!?

 

あれよあれよと僕も分娩室へ。

けど、ヨッメはそれどころじゃない。

苦しそうに顔をしかめ、額には汗が浮かんでいる。

 

サツキ
が…がんばれ!!
がんばれ!!!

 

ヨッメの手を握ることしかできなかった。

心の中で、ヨッメと子どもの無事をただただ祈った。

 

 

 

 

 

「あらぁ〜!かわいい女の子〜!」

「お母さん、頑張ったわねぇ〜!」

 

先生と助産師さんの祝福の声が響いた。

 

額に手を当てて、ホッとしたように息を吐くヨッメ。

僕も胸を撫でおろした。

 

フニャフニャすすり泣く娘を、助産師さんが手際よく検査に回す。

ひと通り検査を終えると、「ほらあ〜お母さんよ〜」とヨッメの胸元に置いてくれた。

 

 

天使だ。まぎれもない天使。

いつの間にか泣きやんで、気持ちよさそうに目を閉じている。

ヨッメは涙を流すわけでもなく、そんな天使の顔をじっと見つめていた。

 

……。
ヨッメ

 

ヨッメは天使の頭を優しく撫でた。

そして、ささやくように言った。

 

会いたかったあ…
ヨッメ

 

 

それを聞いて、ワイの涙腺完全崩壊。

 

サツキ
うおんwwwおおおんwwww
ヴォエエwwwオォエエwwww
ブゥイイインwww
フォフォフォフォwww

 

…申し訳ないけど、これがあなたのパパよ。
バブちゃん。
ヨッメ

 

 

かぞく

 

4年後に2人目の子どもが産まれた。

今度は男の子。

僕に似てあと先考えないタイプで、よく転んで泣いている。

ただ、ヨッメに言わせてみれば、「男の子はそれくらいがちょうどいい」らしい。

 

一方、娘はめちゃくちゃしっかりしている。

弟の世話はよくしてくるし、頼んでもないのに食器を洗ってくれたり洗濯物を畳んでくれたり。

とても僕の遺伝子が入っているとは思えない。

 

ヨッメは相変わらず仕事一筋だ。

何年か前に昇進して、今は部下の育成に余念がない。

けど、オフの日は仕事用のケータイを家に置いて、子どもたちを一日中外に連れ回している。

 

間違えて仕事用のケータイを持ってきた。
プライベート用を届けてくれ。
今すぐだ。
ヨッメ

 

サツキ
ファッ!?

 

 

 

そんな感じの、かぞく。

 

 

 

 

 

 

 

おしまい。

 

 

 

 

 



 

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