11月1日、娘の8歳の誕生日。
自宅でささやかな誕生会を開いた。
(クラッカーパァーン)
娘が産まれてからつくづく思う。
時間の流れは本当に早い。
あの小さかった娘が、もう8歳ー。
◆
◆
その日の夜。
リビングでひとり、なんとなくスマホの古い写真を見返した。
産まれたときの写真。
初めてハイハイしたときの写真。
ウソみたいに小さな娘がそこにいる。
いや、今でもかわいいけどさwww
8歳の女の子ってのは、僕が想像してたよりずっと大人だ。
学校に着ていく服を毎朝悩んでるし、友だち同士でLINEのグループも作ってる。
最近は、ひとりで習い事にも通うようにもなった。
お風呂にはまだ一緒に入ってくれる。
けど、それもあと少しで避けられるようになるだろう。
起きてたのか。
ありがとね、寝かしつけ。
「チェンソーマン」の3話観ながら。
ヨッメと晩酌しながら、娘が産まれたときのことを思い出していた。
話は今から8年前、2014年にさかのぼる。
2014年 冬
ある寒い日の朝、ヨッメが何の前置きもなく言った。
思わずコーヒーを吹き出しそうになったのを覚えている。
ヨッメが妊娠検査薬をテーブルに置く。
実物を見るのは初めてだ。
何が陽性で何が陰性かだなんて当然わからない。
なのに、縦に線が2本入っているのを見て、なぜか反射的に「おおっ!」と声が出た。
仕事行ってくる。
ヨッメはいつもと変わらない調子で仕事に行った。
相変わらず玄関に鍵はかけていかない。
正直言って、喜びより戸惑いの方が大きかった。
自分なんかに父親が務まるのだろうか…?
そんなことを考えながら、すっかり冷めたコーヒーをすすった。
数日後
後日訪れた病院で、ヨッメの妊娠は正確なものだとわかった。
ハロウィンベイビーだな。
妊娠がわかった日から、ヨッメはアルコールをピタリとやめた。
そして仕事用とは別に手帳を買って、日々の体温や体調の変化を記録するようになった。
念のため断っておくと、手帳を盗み見したわけじゃない。
ヨッメが手帳に何かを書いているとき、気になって質問してみたのだ。
知ってるだろ、私が手帳好きなの。
体重も書いてるんだぞ。
時同じく、僕も僕でタバコをやめた。
特に意味はないけど、最後の一本は吸わずに捨てた。
2014年 春
ヨッメの検診には毎回付き添った。
ひとりの方が気楽だ。
ヨッメは煙たがっていたけど、エコー越しに我が子を見るのはこの上ない幸せだった。
やがて性別も女の子だとわかった。
そんなある日。
仕事が終わって家に帰ると、ヨッメが真剣な顔で本を読んでいた。
姓名判断の本だ。
非科学的な物事は「オカルト」と一蹴するタイプなので、その姿に僕はひどく驚いた。
ヨッメの手元にはノートが広げられていた。
候補名らしき名前でびっしり埋まっている。
それは他でもない、両親のおかげだ。
両親はそんな願いを込めて私の名前を決めてくれた。
それを知ったとき、意味もなく泣きそうになった。
いずれこの子が私たちのもとを離れていっても、好きな人ができて結婚しても、名前だけはずっと離れない。
その後、僕たちは何日も話し合って子供の名前を決めた。
最終的に決めたのは、流行りでもない、特にひねりもない、ごく一般的な名前だ。
けど、そのありきたりな名前には、僕とヨッメの想いがぎっしり詰まっている。
一緒にお酒を飲みながら。
ヨッメはそう笑っていた。
2014年 夏〜秋
本人も言うように、穏やかに日々が流れていった。
痩せてるから何かと心配も多かったけど、幸い僕の杞憂だったようだ。
チケットは取ってある。
結局、ヨッメは産休直前までバリバリ働いていたし、オフの日はフツーに遊びに出かけていた。
◆
◆
日本中がハロウィンムード一色に包まれた、10月31日。
仕事中、とつぜんヨッメからの電話。
自分でもよくわからない言葉を叫んで会社を飛び出した。
大急ぎで車に乗り込む。
ハンドルを握りながら、子どもが産まれたあとのことしか考えていなかった自分を呪った。
バカ!俺のバカっ!!
子どもに着させたい服とか、買ってやりたいおもちゃとか…
そんなの優勢順位めっちゃ低いじゃん!!
大事なのはヨッメとお腹の中の子どもの「今」じゃん!!
こういう時の対処法勉強しとけよ!!
なにテンパってんだよ!!
バカ!!マジで俺のバカっ!!
特殊部隊が突入するみたいに家のドアを開けた。
ヨッメがきょとんとした顔でこちらを見る。
青ざめてんぞ。
破水って聞いて慌てて…。
だ…大丈夫なの?
けど病院に電話したら、今から入院道具を持ってきてくれって。
ひとまず、病院まで送ってくれ。
(ホッ…)
病院までの車内、ヨッメはやけに口数が多かった。
これ以上、僕に余計な心配をかけさせないためだと思う。
なんだか胸が締めつけられ、この日はほとんど眠れなかった。
11月1日
翌日、仕事を休み朝一で病院へ。
ヨッメはベッドに横になっていた。
僕を見て、ツラそうに体を起こす。
今朝から陣痛の感覚が狭まっているらしい。
”いよいよ”がきたのは午後4時だった。
事前の話し合いで、立ち会いはしない約束になっていた。
「ひとりがいい」というヨッメの意見を尊重したカタチだ。
しかし、分娩室へ移動する際に思わぬハプニングが起きた。
「ほら!お父さん!奥さんをサポートしてあげて!」
ベテラン風の助産師さんが、僕の手を無理やり引っ張ってきたのだ。
えっ、ええええっ!?
あれよあれよと僕も分娩室へ。
けど、ヨッメはそれどころじゃない。
苦しそうに顔をしかめ、額には汗が浮かんでいる。
がんばれ!!!
ヨッメの手を握ることしかできなかった。
心の中で、ヨッメと子どもの無事をただただ祈った。
◆
◆
◆
「あらぁ〜!かわいい女の子〜!」
「お母さん、頑張ったわねぇ〜!」
先生と助産師さんの祝福の声が響いた。
額に手を当てて、ホッとしたように息を吐くヨッメ。
僕も胸を撫でおろした。
フニャフニャすすり泣く娘を、助産師さんが手際よく検査に回す。
ひと通り検査を終えると、「ほらあ〜お母さんよ〜」とヨッメの胸元に置いてくれた。
天使だ。まぎれもない天使。
いつの間にか泣きやんで、気持ちよさそうに目を閉じている。
ヨッメは涙を流すわけでもなく、そんな天使の顔をじっと見つめていた。
ヨッメは天使の頭を優しく撫でた。
そして、ささやくように言った。
それを聞いて、ワイの涙腺完全崩壊。
ヴォエエwwwオォエエwwww
ブゥイイインwww
フォフォフォフォwww
バブちゃん。
かぞく
4年後に2人目の子どもが産まれた。
今度は男の子。
僕に似てあと先考えないタイプで、よく転んで泣いている。
ただ、ヨッメに言わせてみれば、「男の子はそれくらいがちょうどいい」らしい。
一方、娘はめちゃくちゃしっかりしている。
弟の世話はよくしてくるし、頼んでもないのに食器を洗ってくれたり洗濯物を畳んでくれたり。
とても僕の遺伝子が入っているとは思えない。
ヨッメは相変わらず仕事一筋だ。
何年か前に昇進して、今は部下の育成に余念がない。
けど、オフの日は仕事用のケータイを家に置いて、子どもたちを一日中外に連れ回している。
プライベート用を届けてくれ。
今すぐだ。
そんな感じの、かぞく。
おしまい。
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